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株式会社くだものかふぇ(大分県宇佐市)

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株式会社くだものかふぇ
(大分県宇佐市)

【写真】小野寺さん くだものかふぇは2003年(平成15年)創業、2014年(平成26年)設立。フレッシュジュース専門店のフランチャイズ本部として企画運営、食材、調理器具の卸販売等の事業を行っている。
くだものかふぇの従業員数は4名(2025年11月現在)。
今回は、代表取締役社長の小野寺聡さんからお話を伺った。

共同経営者であった配偶者を亡くしたことなどを契機に、少人数経営へ転換し、従業員の健康は何よりも大事という想いのもと健康経営の取組みを進めている。

まず、健康経営の取組みを始めるまでの経緯についてお話を伺った。

配偶者を亡くしたことなどを契機に、自身がマネジメントできる少人数体制へと転換しました 「当社は2003年にフレッシュジュースの専門店として創業し、九州を中心に店舗展開を進め、従業員数300人規模の会社に成長しました。その後、店舗をフランチャイズ化して経営サポートのみの業態にシフトすることを決心し、2014年に株式会社くだものかふぇを設立しました。」

「従業員数300人規模、売上10億円の会社経営から、現在の従業員数4名、売上2億円程度の業態にシフトするのは勇気のいることでしたが、その背景には、大人数の従業員を雇用し飲食店経営をするより、自身の生き方として少人数で飲食の経営をサポートする企画運営側の仕事をしたいという想いがありました。さらには、共同経営者であった妻が亡くなったことも大きな契機となりました。妻と創業したくだものかふぇを一人で支えていくとなった時に、妻が持っていたカリスマ性や気配りなどが、自分にはない、不得意な部分であることが見えてきました。書籍などで経営を勉強していく中で、『どんな人でも5~7名程度であればマネジメントできる、小さいチームに分割していくとよい』というアドバイスに出会い、現在の業態に落ち着きました。」

健康は何より大事だと考えており、健康経営の取組みも始めました 「妻を亡くすという経験を通して、健康は何よりも大事であり後回しにして良いことは全くない、と身をもって体感したので、従業員の健康を支える取組みは会社設立当初から行ってきました。福利厚生の制度の整備などが終わった頃から、健康経営としての取組みも始めました。」

健康経営の取組みを、認定取得のためではなく会社として取り組むべき課題として主体的に推進しているほか、ストレスチェックを含む3種類の調査を行い、その結果をPDCAサイクルに組み込み、次の施策につなげている。

次に、健康経営の取組みに対する考え方と、従業員の健康状態を把握するための調査の工夫についてお話を伺った。

健康経営は認定取得のためではなく、従業員の健康を支え、かつ会社の成長に寄与するものという意識のもとに取組みを進めています 「健康経営の認定を目的に取り組んでいるわけではありません。むしろ、認定要件の評価項目以上の取組みをしていきたいと考えています。評価項目は毎年アップデートされており、企業として取組みを求められている最新の内容が詰まっているので、毎年発見があります。評価項目をチェックシートのように参考にしながら取組みを進めています。」

【写真】【図1】健康経営戦略マップ  「健康経営の具体的な取組内容は、従業員が主体的に検討し企画を進めています。例えば今年(2025年)は、両立支援の制度整備に取り組んでいます。今は両立支援が必要な従業員はいませんが、将来の備えとして整備を進めておくことは大事だと考えています。また、企画内容について従業員と私(小野寺さん)とで検討する際は、当社の“健康経営戦略マップ”(※【図1】参照)のどの部分に寄与する取組みなのかを必ず確認するようにしています。健康“経営”であるからには、『従業員が健康になって良かった』だけがゴールではなく、そこから先の生産性向上や職場環境向上、それによる売上増など会社の成長につながるか、という視点で考えることが大事だと考えており、一貫して伝えています。毎回、私(小野寺さん)から確認されるので、最近では、従業員が自らマップにおける位置づけを明確化した上で検討を進めるようになってきました。」

健康習慣や業務上のストレスや課題、メンタルヘルスの状況を把握するため、年に3回、3種類の調査を実施しています 「また、従業員の健康状態を把握するため、年に3回、3種類の調査を実施しています。1つ目は従業員の健康習慣や意識を把握するためのアンケートで、外部サービスを活用しています。2つ目は私(小野寺さん)が独自に作成しているアンケートで、業務量、業務時間、給与満足度、担当業務や取引先との相性や、仕事上のアイディアなどについてかなり具体的に意見を聞くものです。3つ目はストレスチェックです。外部サービスを活用して実施しており、併せて、産業医への相談窓口と弁護士への相談窓口も整備しています。高ストレス者はこれまでに出ていません。」

3つの調査結果を総合的に判断して、課題を見出し、次の施策に生かしています 「3つの調査結果は、相互に補完し合い、次の施策を検討するために活用しています。当社では、PDCAサイクルに基づき、調査の実施時期を明確に定め、結果から課題を明らかにし次の施策につなげることを運用ルールとして徹底しています。少人数の組織では、制度の整備が後回しになったり、対応が曖昧になったりしがちなので、中小企業だからこそ、制度として整備し、期日通りに実施し改善につなげる姿勢が必要なのではないかと考えています。」

「このような取組みを進めてきた結果、2021年には“健康経営優良法人(中小規模法人)”の認定を取得し、2022年からは4年連続で“ブライト500”の認定を受けることができています。」

長く一緒に働き続けたいという想いを軸に、社風や働き方に合わせた多様な健康経営の取組みを積極的に実施している。

最後に、健康経営の具体的な取組内容と、社長の想いについて伺った。

テレワークなどの就業環境の整備、休暇制度の見直し、業務効率化など、当社の社風や働き方に合わせた工夫を随時取り入れています 「当社では、コロナ禍以前より、育児中の従業員など多様な働き方に対応する目的でテレワークを導入していました。導入に当たっては、労働基準監督署に相談しながらテレワーク勤務に則した就業規則を整備しました。現在もテレワークは継続しており、対面では年に数回しか会わない従業員もいます。テレワーク中は、テレビ会議システムを常にオンライン状態とすることをルールとしていますが、打ち合わせなど必要な場面以外では画面に映っていなくてよいこととしています。近くで一緒に仕事をしているという感覚や、ちょっとした声かけや質問にすぐに応じられる距離感が、テレワークにおけるコミュニケーションでは大事だと考えています。」

「また、“〇〇休暇”など目的を指定した有給休暇制度を廃止しました。休暇の目的をオープンにし合うような活発な雰囲気の社風であれば、休暇取得を促進する策になると思いますが、適度な距離感を大切にしている当社の場合は、休暇の理由を明らかにする制度はかえって使いづらいのではないかと考えたためです。この判断は当社のメンバーには合っていたようで、現在の有給休暇の取得率は100%です。」

「業務効率化にも取り組んでいます。従業員1人あたりの年間売上を1億円にすることを目標に掲げているのですが、現在は、従業員数4人で会社の売上が2億円ですので、目標達成のためには1人あたりの売上を倍にする必要があります。そのため、現在の業務を今の半分の時間で進められるように、会議の時間を短縮したり、時間を厳守したりするなど工夫をしながら取り組んでいます。このような働き方をしているので、当然残業はほぼないのですが、今年はあえて終業時間を超えてもキリのいいところまで仕事をするといったような形で、意図的に残業をするという取組みも実施しています。残業することによる生活への影響などを体験することで、“残業ゼロ”自体を目的化するのではなく、本当の意味での業務効率化の意義を再確認する良い機会になっています。」

誰もがストレスなく働けるよう、業務の進め方から処遇に至るまですべてをオープンにし、納得感のある職場づくりを意識しています 「従業員がストレスなく働けるような工夫も様々行っています。まず、業務を属人化させないことをテーマに、全員が同じスキルを身に着けることを目指して、先述のアンケート調査の結果も参考にしながら業務分担をしています。当社は育児休業を取得する従業員も多くいますが、全員がすべての業務を担当することができる体制になっているので、休業期間中も特定の従業員に負荷がかかりすぎることなく対応できています。」

「また、昼礼では毎日10分ほど“価値観共有”という時間を設けています。ビジネス書などの参考書籍を読み、互いに感想を共有したり、業務についての意見交換をしたり、知見を広げるための活動をしたりしています。従業員同士の共通理解が深まるとともに、社内教育やチームワークづくり、日々の息抜きにもつながる大切な時間としています。」

「さらに当社は、評価制度を作らず、勤続年数に応じたいわゆる年功序列の給与体系を採用しています。同時に、個人の担当業務も給与体系もすべて“ガラス張り”、つまり社内全体で共有しているので、従業員同士がわだかまりなく、納得感をもって働けているのではないかと考えています。キャリアアップしたいという従業員に対しては、副業も可としており、関連会社で活躍するルートなども用意して働き方を選択できることを重視しています。」

従業員と長く一緒に働き続けたいという強い想いを軸に、健康経営への投資を積極的に進めています 「今働いてくれているメンバーと、これからもずっと一緒に働いていきたいと思っています。この想いは従業員にも伝え続けています。当社の従業員の平均年齢は40代で、最も勤続年数の短い従業員でも20年以上働いてくれています。これまでに退職者は一人もいません。健康に働ける環境づくりを続けてきた結果だと感じています。」

「創業当初から“幸せな会社づくりをしたい”という目標を持っており、今もその想いは変わりません。従業員が幸せに、そして長く働き続けられるよう、会社が従業員の健康に投資することは収益の中でも十分な割合を持つべきだと考えています。生産性向上のために機械や便利なツールを導入するのと同じように、健康経営への投資は事業継続、成長に欠かせない必要経費です。給与は日々を生きるために必要ですが、健康は生死を、人生そのものを決めてしまう大切な基盤です。だからこそ、健康を何よりも大事に、幸せに長く一緒に働き続けることができる会社でありたいと考えています。」

【取材協力】株式会社くだものかふぇ
(2026年2月掲載)